TIO workshop
at 東京外国語大学
日時: 2012年11月25日(日)
会場: 東京/府中市「東京外国語大学」府中キャンパス 223教室
(東京都府中市朝日町3-11-1)
演奏時間: 00:00p.m.~18:00p.m.
料金: 入場無料(楽器持参での一般参加可能)
※学園祭のなかでの公開ワークショップ
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11月21日(水)から25日(日)にかけて開催された東京外国語大学の学園祭最終日に、来年の一月に公演が予定されている、第三回東京インプロヴァイザーズ・オーケストラ(以下TIOと略記)のメンバーを中心にした有志が集まり、「指揮された即興」の公開ワークショップが開かれた。準備・退出の時間も含め、正午から夕方の六時までという長時間を、適宜休憩をはさみながらおこなわれたワークショップには、フルート奏者の Miya がかかわるプロジェクトで来日中だったインドのグループ KENDRAKA のメンバーや、ツアーに同行しているヴィオラ奏者ベネディクト・テイラーなども参加、TIO創設の目的のひとつである、即興演奏による草の根交流にもなっていた。特に、現在イギリスとインドを往復して演奏活動しているテイラーは、Miya が英国留学中に参加したロンドン・インプロヴァイザーズ・オーケストラの楽団員でもあり、この意味でも、昨年新たにスタートしたTIOへの参加は意義深いものといえる。第一回のリカルド・テヘロ、第二回のテリー・デイに引きつづき、三人目の英国ゲストということになるわけだが、実際的に、テイラーがコンダクションをまかされた場面では、英国でおこなわれている指揮の具体例が紹介された。
ワークショップの会場となったのは、音楽室のような特別な場所ではなく、一般講義がおこなわれるようなごく普通の教室。集まった20人ばかりのメンバーは、いつもは教壇が置かれている教室前方のスペースの左右にわかれ、もし机がなければ半円状になるように着座した。一方、指揮をまかされたミュージシャンは、最前列か、あるいは二番目かの机と机の間に立ってメンバーに指示を出し、コンダクションをおこなった。学園祭の期間中とあって、入場者の出入りは自由になっており、時間帯によって観客数は増減した。
公開ワークショップでは、休憩をはさむひとつのセクション内で、何人かの指揮者がリレーされていったのだが、英国の即興オーケストラを経験しているテイラーはもちろんのこと、今回は、それぞれに独自の音楽ワークショップを経験しているミュージシャンたちがアイディアを持ち寄ったため、これまでに増して多彩でユニークなコンダクションがつづいた。以前、第二回TIO公演の準備段階で、やはりこの東京外国語大学の別棟を使ってワークショップ・リハーサルがおこなわれたが、そのときは指揮のバラエティが許容されてはいるものの、コンダクションのベースになる指揮法が想定されていて、前もって決められたハンドキューを学習したり、再確認したりする時間帯がもうけられていた。それはコンダクション未経験者に対する啓蒙活動といえるようなものであり、同時に、参加者によってバラバラの意識をチューニングする役割も期待されていたように思われる。しかしながら、そのためにコンダクションそのものが平準化されてしまう(誰が指揮してもおなじような演奏になってしまう)という否定的な側面も、避けがたく存在していた。そうした成果を踏まえることで、衆知を集めるという今回の試みが実現したものであろう。独自に開発したワークショップの知見、ゲームピースふうのやり方、身体の動きそのもののインタラクティヴなかかわりと、方法は千差万別だったが、最終的にはやはり指揮者が持っている音楽性の勝負になっていた。なによりも印象的だったのは、こうしたバラエティの獲得が、オーケストラ・ミュージックを明るいものにした点で、それはおそらく、演奏が学習されたものの発表会ではなく、メンバー自身がみずからをフィーチャーする機会になったことによるのであろう。一月の本公演が楽しみである。■
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