2024年6月18日火曜日

第16回シアターX国際舞台芸術祭2024: スウェーデン特集「Sharp」

 


第16回シアターX国際舞台芸術祭2024

「地球惑星人として、いま」

スウェーデン特集「Sharp」

ヘレナ・フランゼン

『トリア』ソロ(部分)

SU-EN

『生きる』

クリスティーナ・カプリオーリ

『怖いソロ』(部分)

日時:2024年6月18日(火)

開場: 6:30p.m.、開演: 7:00p.m.

会場: 両国シアターX

(東京都墨田区両国2-10-14|tel.03-5624-1181)

料金: 前売り/当日: ¥1,000

出演: ヘレナ・フランゼン、SU-EN、クリスティーナ・カプリオーリ


 これまでにも機会を得てたびたび来日公演している舞踏家SU-ENを中心にしたスウェーデンの女性振付家3人をフィーチャーした来日公演「Sharp」が開催された。2020年に来日が予定されながら、コロナ禍がおさまらず延期になっていたプログラムがようやく実現したものである。企画の要石になったSU-ENは、土方巽亡きあとの白桃房時代に研究生で結成された“グノーム”に所属して活動した経験があり、日本の舞踏シーンに足跡を残すだけでなく、中西夏之氏のアトリエを改装して土方巽舞踏資料収蔵庫として再生した「猿橋倉庫」の維持に協力するなど、いまもなお日本との関わりを大切にしている舞踏家のひとりである。関係者にとっては、久しぶりの里帰り公演となったのではないだろうか。

 <国際舞台芸術祭2024>での演目はいずれもソロ作品で、踊り手それぞれに特徴のある動きの語法と構成によって個性を際立たせていたが、3者ともに選択された音楽との相性がよく、このことが作品としてまとまった世界を踊る大きな力になっていた。

 エントリー作品は、出演順に、(1)頻繁な歩行によって身体の方向と立ち位置を次々に移しながら踊られたヘレナ・フランゼンの『トリア(部分)(音楽:ユッカ・リンタマキ)は、いくつかの動きを反復しながらミニマルな展開をしていく作品で、「何もない空間でくりかえし自己に回帰していく」さまを踊った作品。(2)真紅の衣装で踊ったSU-ENの『生きる』(音楽:リセ=ロッテ・ノレリウス)は、観客席から声を使いながら登場したり、途中から下手アリーナに降りると、髪の毛に生花をするようにして花を飾りつける場面(柿崎順一)を入れるなど奇想天外な演出によって進行、いつもは劇場のようなブラックボックスではなく庭で踊っているという彼女が、すべての生きとし生けるものとの交感を踊りにした作品だった。そして最後は、(3)リズムというよりパルスのように細分化された時間とともに多彩なしぐさがあらわれては消えていくクリスティーナ・カプリオーリの『怖いソロ(部分)(音楽:リシャール・シャルティエ、アレッサンドロ・コルティーニ)で、動きと音楽の相乗効果に特別な感覚を誘発しながら、フェスティバル初日の「踊る妖精」で『ないてたらね あそぶ』を踊った山田せつ子とも通じるスタイルで踊った。ダンス界全体にコロナ禍からの本格的な回復がうかがえるこの時期、スウェーデンのダンスの一端を知る貴重な機会となるものだった。(北里義之)


 【第16回シアターX国際舞台芸術祭2024|プログラム詳細】

  ☞http://www.theaterx.jp/24/images/IDTF2024.pdf


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