第16回シアターX国際舞台芸術祭2024
「地球惑星人として、いま」
【7日目】
■
白野利和
『彗星』"Comet"
奥村 薫
『シャドウ・フラワー』"Shadow Flower"
森谷紀久子(作・構成・美術)
『白い羽の詩』"Poems of white wheathers"
出演: 尾形充洸(語り)、森谷紀久子(ダンス)
日時:2024年6月26日(火)
開場: 6:30p.m.、開演: 7:00p.m.
会場: 両国シアターX
(東京都墨田区両国2-10-14|tel.03-5624-1181)
料金: 前売り/当日: ¥1,000
<第16回シアターX国際舞台芸術祭2024>7日目の演目は、作品イメージをフェスティバルテーマ「地球惑星人として、いま」に寄せたソロ2作品と、合衆国シアトル在住のダンサーによる舞踏作品という、モダンダンスのラインナップだった。以下略述する。
(1)石井みどり・折田克子舞踊研究所に所属して活動する白野利和の『彗星』では、ドヴォルザークの『新世界より』が流れるなか、赤いクッションを頭上に掲げたり、頭にかぶったりした白野が彗星と化して地上に飛来する。両手でクッションを突きあげ空中に放り投げると、落ちてきたところを抱き止めて転倒するまでが導入部。中間部で両手に持った布をさばきながらダイナミックなサロメダンスを踊ったのは、「様々な生命の源を運んで来た彗星」に捧げる讃歌だったろうか。最後にふたたびホリゾントに置いた赤いクッションを手にして両手で頭上に掲げた瞬間、クッションから滂沱のごとく流れ落ちる籾殻を頭から浴びて突然の暗転となった。
(2)1990年代にアスベスト館のワークショップで元藤燁子、大野親子から舞踏を習ったという奥村 薫は、その後仕事の関係で渡米、現在はシアトルに在住して活動している。『シャドウ・フラワー』は、年老いた娼婦の存在と過酷事故を起こした原発のイメージを重ねて踊った作品。「虚ろな時間と、虚ろな身体、無限に落ち続ける恐怖と無重力の驚異」が、ピアノ椅子に座ったままの姿勢で膝をあわせて両足をあげたり上体を傾けるなど、無重力のなかを遊泳するようにして巧みに演じられた。ジェット機の爆音がモンポウのピアノ曲につながっていった後半は、年老いた娼婦を演じた薄い手袋と帽子を脱いで椅子の背もたれにかけると、床に敷かれたカラフルな布をとって腕にかけたり、両手で抱きしめたりした。最後は、紫陽花のブーケを手に観客席前まで歩くところで暗転となった。
(3)日本舞踊からモダンダンスの世界にやってきた森谷紀久子の『白い羽の詩』は、朗読というよりは語りかけによって宮沢賢治の世界を思わせる風の訪れについて語り、白い羽について詩的に語る尾形充洸に先導されつつ踊った作品で、途中から杖をついて踊るなかで天を仰ぐと、ボレロのリズムとともに天井から羽が雪のように舞い落ちてくるドラマチックな演出が用意されていた。最後に尾形がふたたび登場すると、「どこからか羽根がふわぁー、ふわぁーとはいってくる。どこからやってくるのかなー」といった口調で語りはじめるが、森谷は羽が折り重なり布団のようになった床に横になっていく。モダンダンスのなかに日本舞踊の自然観が透けて見える作品だった。(北里義之)■
【第16回シアターX国際舞台芸術祭2024|プログラム詳細】
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