第16回シアターX国際舞台芸術祭2024
「地球惑星人として、いま」
【4日目】
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西田敬一(作・構成)
『ガザ・劇場・穿つ』"Gaza, Theater, Create"
出演: ひびきみか(ダンス)、北 京一(パントマイム)、
じゅうべえ(紙芝居)、油布直輝(シルホイール)
ハンダイズミ(振付・出演)
『棲息地~銀河の一粒』"Habitat"
チョン・ジエウ Jaewoo Jung(作・出演)
『無人島』"Uninhabited Island"
日時:2024年6月20日(木)
開場: 6:30p.m.、開演: 7:00p.m.
会場: 両国シアターX
(東京都墨田区両国2-10-14|tel.03-5624-1181)
料金: 前売り/当日: ¥1,000
シアターX主催の第16回「国際舞台芸術祭2024」の3日目からは、1公演3作品ずつのオムニバス構成となる。この日は「地球惑星人として、いま」という大きな視点でとらえられたフェスティバル・テーマに呼応する2作品と、本劇場で開催された2024年度の<SAI DANCE FESTIVAL>(5月24日)コンペティション部門に招聘された韓国のダンサー、チョン・ジエウによる同作品の再演『無人島』の3作品で構成された。
(1)西田敬一(作・構成)の『ガザ・劇場・穿つ』は、現代アラブ文学の専門家・岡 真理が、パレスチナ難民の現状を詳細に描いた『ガザに地下鉄が走る日』(2018年11月、みすず書房)の最後に登場する平和なガザを想像する地図アートをなかだちに、ダンス、紙芝居、パントマイム、シルホイールという相互に無関係な民衆芸を反戦のヴィジョンによって連結した作品。沖縄戦を語った紙芝居と大きな輪を自在に操ってパフォーマンスするスポーツ~サーカス芸“シルホイール”の他は、北京一が穴掘人と金庫破り?を、またひびきみかは、赤ん坊に見立てた布をアリーナの観客に手渡したり、ラテンナンバーで踊ったり、テーブルの向こうから上半身裸の背中を見せて両手を広げたり、ロウソクが一本立っているみたいに片手をまっすぐ伸ばしたりするなど、それぞれに複数回登場して細かく場面構成していった。現代の戦争とパフォーマンスを背中合わせに語ろうとした作品といえるだろうか。
(2)ハンダイズミの『棲息地~銀河の一粒』は、公演冒頭で銀色に光るテープをリールから引き出しながらステージを右回りに歩き、銀河の渦を作り出しながらその中心で踊っていった作品。「地球惑星人」のテーマは、「私の住所が大宇宙 銀河系 太陽系 地球 日本 神奈川県 横浜市…と知った。無限の空間の中の一粒でしかない私の、そのなかにも無限に小さな宇宙があるらしい」というヴィジョンに発展し、極小の私と極大の宇宙を身体において相同的な関係に置くという、ダンスならではのイマジネーションが発揮されたものである。そこに多く自然の側に立っている女性ならではの身体性が感じられる。パフォーマンスにおいて頻出した身体の震えは、宇宙空間に放り出された孤独のようでもあり、自身が宇宙を胚胎することの悦びのようでもあり、ダンスに独特の色彩を与える働きをしていた。
(3)トリを務めたチョン・ジエウ Jaewoo Jung の『無人島』は、ピアノ椅子とともに踊る作品で、最初からポケットの中に入って出てこない右手に手を焼き、右手指が椅子のうえを歩いたり、走ったり、しぼんだ風船のようになった身体に息を吹きこむと復活したりとパントマイム的な展開をみせながら、次第にダンサーが右手に負けてステージを引きまわされるように見えてくるという主客転倒によって、コミカルな味わいを出していた。斜めにしたり逆さにしたり、天板に腹をつけて平泳ぎしたりすわろうとして逃げられたりと、手品的な視覚効果を生かした細かい動きによって椅子との関係がさまざまに変化していくのも見もので、一脚の椅子を遊びつくした作品だった。「無人島」のタイトルは、ソロダンスをクリエーションするときの孤独についていったものだろうか。(北里義之)■
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