2011年10月8日土曜日

平間貴大


 「実験音楽を語る」の第二回に参加したパネリスト平間貴大は、同席した角田俊也が、思わず「新人類」という懐かしのジャーナリズムの用語で形容したように、一種つかまえどころのないアーチストだった。常時持ち歩いていたカセットによる録音を自分の「即興」といい、最短時間で盤面に詰めこめるだけ詰めこんだ無音トラックだけのCDを構成するなど、続々と出てくる発想そのものが奇抜な、前代未聞のものであり、どれひとつとして誰も思いつかないし、思いついたとしてもけっして実行に移さないだろうと思われるようなものばかりだった。オフサイトを経験した平間が、活動の最初期に影響を受けたという秋山徹次や中村としまるなどが、ごくまっとうな、平間にくらべれば、ごく平凡な即興演奏家に見えてしまうほどだ。時間の関係で、彼の現在の活動がフォーラムの俎上に乗ることはなかったが、会場には、平間が現在参加している「新方法主義」の美術家・中ザワヒデキらの姿もあった。しかしながら、そうであるがゆえに、パネリストの資質に予想以上の大きな開きがあったフォーラムの対話は、行為へといたるコンセプトや思想を語るのではなく、これまで自分のしてきたことを箇条書きにして、坦々と自己紹介していった彼の新人類ぶりを軸に(あるいはネタに)進行していったのだった。


[初出:mixi 2011-02-25「平間貴大」/加筆修正のうえ転載]