2011年10月26日水曜日

どっちが先手?


 今日こそは負けないぞ。待ったするなよな。おまえの王さんふたりいるんじゃねえか。などと喧嘩しながらチェスの駒をならべているのは、エンジニア/エレクトロニクス奏者の “カントク” こと鈴木學と、ギタリストの “ゲス番長” こと杉本拓である。というのは真っ赤な嘘。2011年1月15日(土)、この日ふたりがチェスを戦わせている暇はなかった。明大前キッド・アイラック・アート・ホールで開催された鈴木學ソロCD『Kantoku Collection』発売記念コンサートで撮影されたこの写真は、準備の整った会場に、鈴木が杉本のライヴのために製作したチェス盤音具をもちこみ、ふたりして会場の片隅にディスプレイしている場面である。記念コンサートの前半を、サウンド・インスタレーションで、また後半をギター・カルテットによる鈴木作品の演奏で構成されたライヴで、チェス盤がチェス盤として、また楽器として活躍する場面はなかった。あくまでも “音楽家” 鈴木學をフィーチャーするインスタレーションの一部分として、そこに置かれたのである。



[初出:mixi 2011-01-16「どっちが先手?」]