2011年9月13日火曜日

ゴミ袋と山高帽──天狗と狐と兎と和尚とキャプテン3




 ちょっとしたアクセントとして杉本拓が身にまとう装身具は、あえて場違いなものを選択するという点で「異装」と呼ぶべきだろうが、おそらくは人目を驚かせたいという素朴な悪戯心に発したものであるとともに、テキスト・リーディングのような方法論的パフォーマンスとくらべると、いわくいいがたい情緒性を帯びているように感じられる。

 いうまでもなく、服装もまたモードの文法をもっている。紙袋をかぶったり、サングラスをかけたり、蝙蝠傘をもったり、雨合羽を着用したり、ゴミ袋をかぶったりする異装の数々は、そうしたモードの文法はもちろんのこと、音楽でも美術でも、すべからく論理的になされるパフォーマンスそのものを、想像力の飛躍によって斜めに横断していくために採用されているのではないかと想像される。本人の趣味はともかく、少なくとも、杉本が関わるパフォーマンスのなかで、そのようなものとして働いているのは間違いないだろう。

 それらは、パフォーマンスのなかに出現する論理的なるもの、言語的なるものを破壊する否定的な行為ではなく、それらを混乱させるような併置になっていること、そのため、ある種の “やつし” と呼ぶことができるだろうこれらの異装は、シンプルな肯定/否定のような言語的二項対立に回収されることなく、はるかに不可解なものとして私たちの前に出現するのである。

 「天狗と狐と兎と和尚とキャプテン」で杉本がかぶった透明なゴミ袋は、最初、かつて杉本が実験音楽の楽曲を演奏する公演で身にまとった雨合羽を連想させた。しかしこの日の公演で、雨合羽がゴミ袋に化けたことは、パフォーマンスにおける意味はおなじであるとしても、結果的には、いわくいいがたい必然性を帯びていたように思われる。■



[初出:mixi 2011-04-01「ゴミ袋と山高帽」]

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■天狗と狐と兎と和尚とキャプテン
 日時: 2011年3月25日(金)
 会場: 東京/千駄ヶ谷「ループライン」
  (東京都渋谷区千駄ヶ谷1-21-6 第3越智会計ビルB1)
 開場: p.m.7:30、開演: p.m.8:00
 料金: ¥2,200+order/25日26日通し券: ¥3,500+2orders
 出演: 杉本拓、宇波拓、佳村萠、坂本拓也、秋山徹次
 予約・問合せ: TEL.03-5411-1312(ループライン)




ループライン入口わきの掲示板に
張り出された当日のお品書き。