2024年7月18日木曜日

第16回シアターX国際舞台芸術祭2024[18日目]: ROOT Project/原 牧生+柳家小春/江ノ上陽一

 


第16回シアターX国際舞台芸術祭2024
「地球惑星人として、いま」

【18日目】



ROOT Project

『ROUTE_X』

創作・出演: 髙 瑞貴、堀之内真平


原 牧生柳家小春

『たけくらべ 新内で語る樋口一葉

"TAKEKURABE IchiyoHiguchi in Shinnai style"

朗読: 原 牧生

三味線・浄瑠璃: 柳家小春


江ノ上陽一

(スーパーパントマイムシアターSOUKI)

『with friends

構成・演出・出演: 江ノ上陽一


日時:2024年7月17日(水)

開場: 6:30p.m.、開演: 7:00p.m.

会場: 両国シアターX

(東京都墨田区両国2-10-14|tel.03-5624-1181)

料金: 前売り/当日: ¥1,000

舞台監督: 宇佐美雅司

照明: 曽我 傑、宇野敦子

音響: 柏 環樹、鳥居慎吾、川村和央

主催: シアターX



 『dodo』や『doldrums』などの驚異的なソロダンスで短期間のうちに高い評価を受けるようになった髙 瑞貴が、俳優の堀之内真平と結成した新ユニット“ROOT Project”は、ソロダンスに自足するのではなく、協同的な身体の関係性を模索してクリエーションにさらなる可能性を開きたいダンサーの第一歩となっている。ユニットによって今年の春に公演された『ROUTE_X』(2024年5月、両国シアターX)の改訂版を公演した今回も、クラーベのような短い木の棒を2本無限にやりとりするミニマルな動きをデュオ・パフォーマンスの中心に置きながら、コンタクトのあるなしで前後半を二分したり、ステージ上に金属オブジェを配したり、観客席から登場した堀之内が笑い声を発しつづけたり、アリーナに降りて観客に木の棒を取ってもらおうとするなど、演劇的なセンスを持った新演出がいろいろ試されていた。プロジェクトの試行錯誤はいまだダンス作品に結実するまでに至っていないが、すぐれた身体能力がどのようなダンスを生んでいくのか、大いに期待していいユニットとなっている。

 樋口一葉の『たけくらべ』(1895-96)は、二葉亭四迷や夏目漱石らによる明治期の言文一致運動を尻目に、そもそもが擬古文で書かれた小説として異彩を放っているが、原 牧生の解説的な朗読に対して情緒纏綿とする柳家小春の新内語りは、江戸から東京へと大きく時代が移り変わる明治期の日本人が経験したであろう感情的屈折をまざまざと思い描かせた。「たけくらべ」のタイトルそのものが、古典である『伊勢物語』の「筒井筒」の本歌取りになっているが、公演で選択されたのは、ヒロインの美登利が子どもたちの筒井筒の世界から花魁となり大人の世界に入っていく小説の終わり近くにあたり、後年、文学界に「たけくらべ論争」を引き起こしたことでよく知られている場面である。ホリゾントに屏風をひきまわし、高座の座布団に腰掛けて三味線語りする和装の柳家小春が明治の女の悲劇を語った。

 さきごろ88歳で他界したヨネヤマママコに師事、“ママコ・ザ・マイム”のメンバーとして活動した江ノ上陽一は、ジョン・レノンの「イマジン」を日本語(忌野清志郎・訳)で歌った『with friends』で、歌にこめられた平和への思いをバンクシーのステンシル・アート作品『Girl with Balloon』につなげ、最後に風船をふくらませて空に放つパントマイムを演じた。宇佐美雅司の一人芝居『Listen to the He:art ─Love Letter─』において、「愛こそすべて」というあっけらかんとした肯定性がビートルズのポップ性につながっていたように、ジョン・レノンの言葉を介した『with friends』のストレートなメッセージ性も、平和を政治問題ではなく信仰の問題に横滑りさせるマジカルワードとして作用している。(北里義之)



【第16回シアターX国際舞台芸術祭2024|プログラム詳細】

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