【14日目】
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ひびきみか
『Essential OHNO』
"「BUTOH the inevitable」Digest Edition"
アベレイ Lei Abe
『宙の息吹 Sorano Ibuki』
"Breath of spring"
赤羽企画
『喰人鬼』
"JIKININKI"
原作: 小泉八雲
出演: 赤羽 大
日時:2024年7月9日(火)
開場: 6:30p.m.、開演: 7:00p.m.
会場: 両国シアターX
(東京都墨田区両国2-10-14|tel.03-5624-1181)
料金: 前売り/当日: ¥1,000
舞台監督: 宇佐美雅司
照明: 曽我 傑、宇野敦子
音響: 柏 環樹、鳥居慎吾、川村和央
主催: シアターX
独自のソロ活動をつづけるひびきみかの『Essential OHNO』は、2023年の暮れに初演された作品をベースに置きつつ、土方巽が1985年に振付け、大野慶人によって踊られてきた『土方三章』のメタフィジカル性を意識して再構成した舞踏作品である。本公演では2024年9月ノルウェー公演で発表されたバージョンのダイジェスト版が踊られた。全体は3つの踊りからなり、シルク地のワンピースドレスで踊った第1章は、床にすわって両手足をくゆらす舞踏ならではの様式を使っての踊り。第2章では、シアターXとも関係の深いグルソムヘテン劇団のハンネ・ディーセルによる詩朗読とともに踊られ、つば広の黒い帽子をかぶり、背中だけ上裸体になる衣装で淑女と娼婦のイメージを合体したような踊りが展開した。最後の第3章では、ステージ上で赤いハイヒールをはき、フラメンコのようにスカートをからげてワルツを踊る場面が用意された。部分的に踊られた見えない相方との社交ダンスには彼女の長いダンス歴が反映され、重厚な作品構成には、一種のルーツ確認の意味もあったように思う。最後は倒れ伏すようにして頭を床に擦りつける印象的な場面で終演した。
現代音楽による声の解放に端を発し、これもまた独自のパフォーマンス・スタイルを獲得することになったアベレイ Lei Abeの『宙の息吹』は、意味を形成しない歌や言葉の断片の集積からなり、つねにステージを歩行しつつ、指さしたり片手を伸ばしたりの身ぶりを入れつつも、特別な意味を発生させる感情表現を回避しながら、声という響きの表面をどこまでも滑走していくようなパフォーマンスが展開した。声が音を指向するという意味で音楽に最も近いところにあるが、声帯を楽器として使うのとも違い、音楽的な展開をすることのないヴォイス・パフォーマンスである。ヴォイス・パフォーマーとして演劇的なものとの境界線上にいる巻上公一と対照的に感じるのは、おそらく身体との関係において、巻上の場合には声が複数性を獲得しているところにあると思われる。巻上の声帯がいわば声の多声性を実現するクロスロードになっているのに対して、アベレイの声帯は、そこにひとりの存在を立ちあげてしまうといったらいいだろうか。そこにあるのはおそらく指向する前衛性の違いなのではないかと思われる。
小泉八雲の原作をドラマ化した赤羽企画の『喰人鬼』は、囲炉裏端における古老の語りという近代文学の一部に残存した説話性を切り捨てることのない一人芝居として演じられた。三脚の椅子が唯一の舞台装置になった作品。
(北里義之)■
【第16回シアターX国際舞台芸術祭2024|プログラム詳細】
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