黒田京子『沈黙の声』
Kyoko Kurora: the very voice of silence
ORT music/Airplane Label/PROJECT LAMU Inc.|APX 1013|CD
曲目: 1. インハーモニシティ II (4:25)、2. おきな草のうた (4:56)
3. ひまわりの終わり (4:25)、4. ホルトノキ (6:33)
5. 白いバラ (6:19)、6. 闇夜を抱く君に (6:11)
7. 割れた皿~道 (5:57)、8. 燃ゆる花 (4:21)
9. あなたと (2:21)、10. インハーモニシティ I (3:25)
11. ろうそく (1:39)
演奏: 黒田京子(piano)
録音: 2012年11月1日
場所: 東京小岩「オルフェウス・レコーディング・スタジオ」
イラスト: 松岡芽ぶき
エンジニア: 菅原直人
ピアノ調律: 辻秀夫
発売: 2013年5月29日
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黒田京子の最初のソロアルバム『サムシング・キープス・ミー・アライヴ』(1991年4月録音)は、いまは亡き川崎克己をエンジニアに、ピアノ調律を、最新作の『沈黙の声』でも産婆役を務めた辻秀夫に依頼して、当時、齋藤徹とコラボレーションしていた画家・大成瓢吉の拠点だった湯河原の個人美術館「空中散歩館」で収録したものである。いい響きを得るため、天井高く造られてはいたものの、特別な防音設備などはなく、自動車のエンジン音や小鳥のさえずりが聴こえる環境だったが、それだけに雰囲気はとても開放的なもので、みずからの音楽と対峙するピアニストの緊張感をよそに、音楽仲間の友人たちが旅行気分で集まったようなところがあった。ふりかえれば、最初のソロが録音されたのは、異領域の表現者をネットワークするORTの活動を一段落させた黒田が、彼女自身の音楽と一対一で向かいあわなくてはならない時期だったように思う。アルバムに制作者としてかかわった私は、録音機材を詰めこんだ帰りの自動車のなかで、「今度はスタジオで」といったエンジニアの声を、いまでも覚えている。
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