2012年10月12日金曜日

小山景子: 80年代ラディカルの系譜




江戸アケミ、そして篠田昌已
TALK & LISTENING
── 江戸アケミとじゃがたら特集 ──
日時: 2012年9月23日(日)
会場: 吉祥寺「サウンド・カフェ・ズミ」
(東京都武蔵野市御殿山 1-2-3 キヨノビル7F)
開場: 4:30p.m.、開演: 5:00p.m.~(終了予定: 7:00p.m)
料金: ¥1,200(飲物付)
出演: 小山景子、竹内 翔
問合せ: TEL.0422-72-7822(サウンド・カフェ・ズミ)



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 若くして他界したミュージシャンも多く、すでに伝説として語られはじめた1980年代のインディーズシーンで、ラクリモーザのボーカリストとして、あるいはソロ歌手として音楽活動していた小山景子が、同時代の証言者として、いま現在の地点から「80年代ラディカルの系譜」を語るレコード鑑賞会「江戸アケミ、そして篠田昌已」が、吉祥寺のサウンド・カフェ・ズミで開催されている。第一回の「江戸アケミとじゃがたら特集」(923日)には、若い竹内翔が聞き役で参加した。「80年代のニューウェイヴ体験者にとって、あらゆることは私的な痛覚から始まっているはずだ」という文章ではじまる小山のレジュメは、のっぴきならないそれぞれの事情から早世せざるをえなかったふたりのミュージシャンをとりまく環境の過酷さを、おぼろげながらに語っている。そのような過酷さを生き延びた小山みずからも、逝ってしまった者に対してのいわれなき負い目を、心に刺さった針としていまも持ち運んでいるひとりのように思われる。個人的な体験談としてならいえることも、歴史を語るにはあまりに当事者であり過ぎるし、無惨な若々しさを捨てきれずに立ち往生してしまったというには、すでにあまりに時間がたちすぎている。憂鬱になるほど生煮え状態にあるのが私たちの季節といったらいいだろうか。1980年代を経験した当事者に、語るための準備はできているのだろうか。江戸アケミが、あるいは篠田昌已がいったい誰だったのかを、いまなら語ることができるのだろうか。

 そうした問題を脇に置くと、「江戸アケミ、そして篠田昌已」の第一回は、長らくじゃがたらを聴いてきたらしい音楽ファンを聴講者に迎え、資料を客観的に整理する作業を通して小山が作成した年譜に従い、バンド活動が開始された1979年からアケミが風呂場で変死した1988年の翌年まで、その年々を代表する一曲を「参考曲」として年代順に聴いていくレコード鑑賞を中心にした会となった。いまでは、メジャーな音楽番組で、じゃがたらが特集されること自体がないという。そうした意味では、江戸アケミや篠田昌已の活動を通して1980年代を再評価しようとするこの鑑賞会も、音盤に残された実際の音を介して記憶を伝承するという、吉祥寺ズミのコンセプトに通じるものかもしれない。こうした記憶の伝承に関する問題は、伝承させたい世代の人間が来店せずに、すでに事情通の音楽ファンがやってきてしまうという点にあるだろう。次回は、じゃがたらのホーンセクションとして参加していた篠田昌已が、江戸アケミの死を乗り越え、彼自身の病いからくる危機感をもってリーダーバンド結成に歩みはじめ、やがてコンポステラ結成へといたる過程が音盤でたどられるはずである。篠田昌已を、あるいは篠田昌已の音楽を、「80年代ラディカルの系譜」と呼べるかどうかはわからない。というのも、コンポステラやちんどんの活動などから見えてくるのは、むしろ「ラディカル」の意味をラディカルに組み替えようとする音楽戦略だからである。たとえそうしたやり方を、篠田自身が露骨に公言することはなかったにしても。次回のイベント開催が待たれるところである。



 【次回開催】
  第二回「篠田昌已(コンポステラ)特集」(11月25日)

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